粕漬けとは

粕漬けは、お酒を絞った後にできる「酒粕」に魚や野菜を漬けた保存食です。平安時代の文献である延喜式にも記載があり、古くから日本にある伝統的な食べ物です。
米を麹や酵母などにより発酵させてもろみを造り、熟成させたもろみを絞ると日本酒ができます。残りの固形成分が酒粕であり、発酵によって増したうま味や栄養がたっぷり残っています。そのため粕漬けはおいしいことはもちろん、健康や美容にも良いものです。

おいしさの秘密

魚の粕漬けは、酒粕からアスパラギン酸※1やグルタミン酸※2などのうま味が魚にうつり、ほのかな酒の風味が魚の臭みを取って、味をいっそう引き立てます。
まろやかなコクに箸でほろりとほぐれる魚の感触、ぷりぷりとした舌触りの絶妙な調和は、粕漬けならではのものです。

※1 アスパラギン酸
アスパラガスから発見されたアミノ酸で、 うま味物質の一つ。エネルギー生産にも関わり、疲労回復効果が期待されています。

※2 グルタミン酸
昆布のうま味物質としてしられているアミノ酸。日本人が昆布のおいしさの元を発見し、「うま味」と名付けました。海外でもUMAMIとして知られています。

粕漬けの美味しさの秘密

健やかできれいに、粕漬けのさまざまな効果

魚の粕漬けには、体と心に嬉しい効果があります。
酒粕にはビタミン、ミネラル、食物繊維、アミノ酸などが、魚にはたんぱく質やビタミン、ミネラル、良質な油などが含まれています。

貧血予防
酒粕には赤血球を作るときに必要な葉酸が豊富です。葉酸が不足すると正常な赤血球ができず、悪性貧血になってしまいます。
また、赤血球を作るために必要なビタミンB6も酒粕に含まれています。
肌や髪を
きれいにする
酒粕のビタミンB2やビタミンB6が、肌や髪、爪の産生を助けます。
ビタミンB2が不足すると、かさつきなどの肌トラブルや、口内炎や口角炎、目の充血を起こしてしまいます。
動脈硬化予防
ビタミンB2には、動脈硬化の原因となる酸化したLDL-コレステロールの分解を助ける働きがあります。
魚の油に含まれるEPA、DHAも動脈硬化を予防します。
心の安定に
ビタミンB6は、セロトニンやドーパミン、アドレナリン、ギャバなどの神経伝達物質を産生するときに必要です。神経伝達物質は精神的なことに関わるので、ストレスをコントロールし幸せを感じるためには、ビタミンなどの栄養も大切です。
子どもの成長に
魚には筋肉や骨、皮膚、髪などを作るたんぱく質が豊富です。
そしてたんぱく質の合成を助けるビタミンB2は、子どもの成長に欠かせません。
魚の油に含まれるDHAは脳の発達を助け、学習機能をアップさせる効果があります。

おいしさと健康は、伝統の中に

伝統的な食事は、自然とその場に住む人の体質や風土に合うものです。
日本人は昔から、米を中心に魚や豆を食べていました。ごはんなどの粒食は、パンや麺などの粉食より血糖値が上がりにくく、体への負担が軽いものです。ごはんと相性の良い魚や豆からたんぱく質などの栄養をとり、肉が少なくても丈夫な体づくりができます。漬物や味噌などの発酵食品は保存を良くする上、栄養価をアップさせ、腸内環境も整えてくれます。
健康や美容の情報があふれている現代ですが、伝統を見つめ直す時でもあるかもしれません。

魚久の粕漬けは、魚の種類によって切り方や塩加減、酒粕の種類を変え、おいしさを最大限に引き出しています。熟練の技など伝統を軸にしながら、時代に合わせて臨機応変に新しい手法をさぐり、現代においしさと健康を伝え続けています。

記事監修:学校法人服部学園/服部栄養専門学校